2017年7月  『 お盆の作法 』

当山では、7月15日から8月16日までをお盆の期間とし、
お盆参りを行なっております。 このたびは「お盆の作法」についてお話を致します。

お盆は、お釈迦様の弟子の目連(もくれん)という僧侶が、亡母のために供養をしたのが始まりとされています。
7月15日はインドでは雨季が明ける日で、その日に仏教の大勢の僧侶は夏安居(げあんご)という修行の合宿を終えます。
目連さんはその日に僧侶達へ食事をご馳走し、餓鬼道(がきどう)で苦しむ母のために供養してもらいました。
餓鬼道とは、生きている時に強欲だった人が死後に堕ちるとされる世界で、食事や水を得ることができず苦しむ世界です。このような方々をお救いしようとするのが「施餓鬼会(せがきえ)」という法要です。
このようにお盆と施餓鬼会はセットになり、今日に至るまで大切に行なわれております。
お盆を正式には「盂蘭盆(うらぼん)」といいます。この言葉の由来は「ウランバナ(意味・逆さ吊りの苦しみ)」という古代インド語(梵語(ぼんご))に漢字をあてたという説や、様々な供物を載せた豪華な装飾のお供え用のお盆のこと、という説もあります。

お盆の作法としましては、先ず、先祖故人をお迎えするにあたり、お仏壇をきれいに掃除します。初盆(はつぼん)・新盆(にいぼん)といい、初めてお盆をお迎えする場合は精霊棚(しょうりょうだな)という特別な棚を設けます。
果物やお菓子などをお盆に載せて、普段よりもたくさんお供え物を準備します。
お霊供膳(りょうぐぜん)といいまして、お膳をお供えされるのも良いでしょう。きゅうりと茄子におがらを足のように刺して、馬と牛を作ります。
馬に乗って早く家に帰ってきてもらい、お盆が終わると供養を名残惜しんで牛に乗ってゆっくりと帰ってもらいます。
暑い時ですので、すぐに枯れてしまうかもしれませんが、お花を買ってきて飾りましょう。お花をお供えする意味は、来客の際にお花を飾ってもてなすのと同じで、お迎えする先祖故人に敬意を表す心が込められています。
また、花は場所を清める効果もあります。このように準備が整いましたら、おがらを燃やして精霊を迎える迎え火(むかえび)を焚きます。
最近は住宅の事情等でおがらを燃やすことができない場合もあるようですが、それでも構いません。
おがらの火をロウソクに移し、精霊棚やお仏壇の灯明にします。
おがらを燃やせない場合は、マッチ等で直接、灯明に火をつけます。
ロウソクを灯すことには、先祖故人へ「あなたが帰ってくるのはここですよ」と教えてあげる目印の意味があります。
お線香に火をつけて焚きます。
お香の煙を頼りに、先祖故人の魂は位牌(いはい)へと寄りつきます。
また、その香りで部屋を清める意味もあります。
仏様、先祖故人は実際にお供え物を食べるということはせず、香りを召しあがるとされます。
お香のよい香りを好まれるのですから、私たちは自分自身が思う、できるだけよい香りのお香をお供えしたいものです。

位牌には故人の名前が彫ってあります。
お香の煙と灯明の明かりを頼りにやってきた先祖故人の魂は、自分の名前が彫られた位牌へと宿ります。
個人的な位牌がなくても、先祖代々の位牌があれば、招かれた多くの先祖はそちらへと宿ります。
お盆の期間、お霊供膳はできるだけ毎日お供えしたいものですが、隔日や三日毎でも構いません。
できる範囲でお供えしましょう。お茶をお供えするのも同様です。
果物やお菓子などのお供え物は、傷んだ折に交換すると良いかと思います。
地域により多少違うようですが、京都では8月16日を送り火(おくりび)とします。
迎え火と同様に玄関でおがらを焚いて、先祖故人の精霊にお帰りいただきます。
いろいろとお話しましたが、お盆の作法で最も大切なことは「心を込めて行なう」ということです。

合掌 橋本悠照